ミノキシジルはもともと高血圧症の治療薬として1979年から使用されていた成分で、副作用のひとつに内服している人に多毛が認められたことで、発毛剤として開発が行われ1988年からAGAの治療薬として使用されるようになりました。
そのためミノキシジルは発毛効果が期待できるという点で薄毛の治療を検討している人にも注目されている成分のひとつです。
ミノキシジルが配合された治療薬には外用薬と内服薬ミノタブ(ミノキシジルタブレット)の2つがあり、さらに施術では注射によるミノキシジルの注入治療があります。
ではまず始めにミノキシジル外用薬(塗り薬)で得られる効果について解説します。
ミノキシジルが配合された外用薬(塗り薬)は、内服薬のミノタブ(ミノキシジルタブレット)と比較すると効果はややゆるやかではありますが、直接頭皮に塗ることで成分が毛根に作用することで発毛効果が期待できます。
また日本皮膚科学会においても推奨度が高い治療とされているため、薄毛に悩む人にはミノキシジルは有効な成分です。
ミノキシジル外用薬は医療機関はもちろん市販やネットで購入することができますが、発毛効果が期待できる反面、脱毛を抑える効果に関しては期待できない可能性があります。
そのためミノキシジル外用薬の取り扱いがあるクリニックでは、ミノキシジル外用薬のほかに脱毛を抑える内服薬と併用して処方されることが多いです。
外用薬に配合されるミノキシジルの濃度は5%までと定められていますが、外用薬を扱っているクリニックでは配合濃度を調整して処方したり、配合濃度が2%や3%など低い濃度を扱っているクリニックもあるため、薄毛の状態に合わせて使用することも可能です。
ミノキシジル外用薬は多く塗布すれば高い効果が得られるというわけではなく、定められた用法・容量をきちんと守ることで効果が期待できます。薬局やインターネットなどの市販でも購入できますが、使用していて効果が得られない場合には、専門のクリニックで相談するとよいでしょう。
では次に内服薬ミノタブ(ミノキシジルタブレット)の効果について解説します。
ミノタブは内服することで血中から毛根に作用するため、高い発毛効果が期待できると考えられていますが、血中からアプローチするため頭髪のみならず全身の毛に作用する可能性があります。
ミノキシジル配合の内服薬は、薄毛に悩む人たちの間で注目されている成分ですが、ミノタブは国内未承認薬となっており高い副作用が起こる恐れがあります。
またミノタブは内服による国内の臨床試験が行われておらず現時点では国内未承認薬とされており、日本皮膚科学会によればミノキシジルの内服は推奨度DのAGAの治療には推奨しないと記載がされています。
しかし、薄毛の治療薬として国内で認められていないことと、高い副作用が起こる可能性があるという点からも、購入先に関わらず有効性や品質、安全性が確立されたものではないため、ミノタブの服用には危険性があるということを覚えておいてください。
ミノキシジルでの薄毛治療には外用薬を使用した治療法が主ですが、注射や専用機器を用いて頭皮に直接ミノキシジルを注入する「注入治療」があります。
ミノキシジルの注入治療は、注射や専用機器などを使用し頭皮に直接成分を注入する方法で、頭皮の血管を拡張させ血行を促すことで発毛効果が期待できます。
クリニックでは薄毛治療の内服薬や外用薬と併用して治療を行うことが多いです。
ミノキシジルの注入治療は薄毛が気になる部分にピンポイントに集中して治療が行えるほかに、外用薬よりも吸収が高く、内服薬や外用薬より比較的副作用が少ないというメリットがあるといわれています。
クリニックによっては薄毛の状態に合わせてミノキシジルだけでなく成長因子やビタミン、アミノ酸などの成分を配合した「カクテル」と呼ばれる注入治療を行うところもあり、「メソセラピー」や「ミノキジェット」などと呼ばれています。
ミノキシジルの注入治療はAGA治療を行うクリニックで受けることができますが、クリニックによっては注入治療を行っていないところもあるため事前に調べてから伺う必要があります。
また注入治療には注射器のほかに専用の機器で針を使わず注入する方法があるので、痛みに不安がある場合はどのような方法で注入するかなども合わせて確認するとよいでしょう。
ミノキシジルを使用することにより副作用があるということを覚えておきましょう。
内服薬(ミノタブ)、外用薬、注入などの治療法によっても起こる副作用が異なるので、以下を確認してください。
内服薬(ミノタブ)
初期脱毛 動悸 息切れ 頭痛 めまい 手足や顔のむくみ 多毛症 肝機能障害 不整脈 心疾患 など
外用薬
初期脱毛 発疹 発赤 かゆみ かぶれ ふけ 使用部位の熱感 頭痛 めまい むくみ など
注射(注入)
初期脱毛 頭皮の痛み 頭皮の痒み 発疹 腫れ 赤み 内出血 熱感 毛嚢炎
ミノキシジルの副作用は治療法ごとで現れる症状が異なり、内服薬よりも外用薬のほうが比較的副作用が起こりにくく、さらに注入治療は外用薬よりも副作用が起こりにくいといわれています。
ミノキシジルが配合された内服薬(ミノタブ)と外用薬、注入治療で比較的よく見られる副作用のひとつに「初期脱毛」というものがあります。
初期脱毛は育ちきれなかった細い毛髪が一旦抜け落ちる症状で、ヘアサイクルを整えるための過程のひとつといわれています。
初期脱毛の症状が現れる時期には個人差がありますが、使用を開始してから10日~1ヶ月ほどで起こり、1ヶ月程度で抜け毛が落ち着く人もいれば3ヶ月ほど続く人もいるようです。
初期脱毛は次第に落ち着くことが多いですが、抜け毛が落ち着かないという人は医師に相談するとよいでしょう。
ミノタブと外用薬には頭痛やめまい、むくみなどの似たような副作用が起こることがありますが、ミノタブ(内服薬)は服用することで血中からアプローチするため頭皮だけでなく全身の毛に作用する可能性もあり、毛が濃くなる「多毛症」を発症する場合があります。
ミノキシジルの注入治療による副作用は、内服薬や外用薬に比べても比較的少なく軽度のことが多いようです。
ただし、注入する薬剤の種類や体質によっては副作用が起こる可能性があります。また注入治療は内服薬や外用薬と併用することが多く、併用する治療薬によっても副作用が起こる可能性があるため、医師と相談のうえで治療を行いましょう。
ミノキシジルを用いた治療法はミノタブの内服薬、外用薬、注入治療がありますが、発毛効果が期待できる半面、上記のような副作用が起こる可能性があるということを覚えておきましょう。
ミノタブや外用薬は自分で購入することも可能ですが、特に国内未承認薬のミノタブに関しては、薄毛治療薬として「品質・有効性・安全性が確立されたものではない」ということを理解しておきましょう。
ミノキシジルを使用してから効果が現れる期間としては、薄毛の程度やAGAの進行状態によっても変わりますが、だいたいが6ヶ月程度で効果が現れる人が多いようです。
効果が実感できるまでの期間には個人差があるため3ヶ月程度で効果が得られたという人もいれば6ヶ月以上経過してから効果が得られたという人もいるためどれくらいの期間で効果がでるとは限定できませんが、決められてた用法・容量で根気よく毎日継続して使用することで効果が期待できます。
また効果が実感できたからとすぐに使用を中止してしまうと、治療を行う前の状態に戻ってしまう可能性があるため、ミノキシジルの使用をやめる際には注意が必要です。
使用をやめたいときや減薬、他の治療法に変更したい場合には医師と相談のうえでミノキシジルのやめどきを判断してもらうのがいいでしょう。
ミノキシジルは、AGA(壮年性脱毛症)以外の人が使用した場合には、効果が期待できない可能性があります。
ミノキシジルを使用しても効果が期待できない人を以下にまとめたので、当てはまる項目がないか確認してください。
①円形脱毛症
円形脱毛症はストレスが原因と言われることが多いが医学的な証明がなく、現在では自己免疫性の疾患が原因とする説が有力といわれています。治療をしなくても治ることが多い病気ですが、治療には内服薬(ステロイド、グリチルリチン、セファランチン等)、外用薬(ステロイド、塩化カルピロニウム等)、紫外線治療(ナローバンドUVB、エキシマレーザー等)などで治療を行います。
②抜毛癖(トリコチロマニア)
抜毛癖はストレスや不安などが原因と考えられることが多く、自分で無意識のうちに毛を抜いてしまう病気です。治療法は心療内科や精神科を受診し、心理療法や行動療法、薬物(抗精神病薬)療法などで治療を行います。
③甲状腺機能低下症による脱毛
甲状腺機能低下症でも脱毛が見られる場合があります。甲状腺機能が低下することで皮膚が乾燥する、毛髪がもろくなるなどで脱毛が起きるとされています。治療には内服薬や外用薬を用いて治療を行います。
④感染症による脱毛症
現在では感染症が原因による脱毛症はそれほど多くはないようですが、ケルスス禿瘡、慢性膿皮症、梅毒、急性深在性毛包炎、帯状疱疹、ハンセン病などの感染症により脱毛が起こる可能性があります。治療法は感染症に合わせて治療を行います。
⑤薬剤による脱毛症
薬剤による代表的な脱毛症は、抗がん剤治療によるものがあげられ、脱毛の程度は薬の種類や量によって異なり、さらに個人差があります。薬剤による脱毛は一時的なものであり、脱毛を防ぐ治療法はありませんが、治療を終了後しばらくすると再び毛髪が生え始めます。
これらが原因の薄毛や抜け毛の場合には、ミノキシジルを使用しても効果が得られない可能性が高いため、医療機関や専門医による治療を受けるようにしてください。
また上記の項目にあてはまらず、使用していて効果が得られない場合にも医師の診断を受けることをおすすめします。
ミノキシジルは発毛効果が期待できる薄毛治療薬のひとつとして使用されていますが、外用薬、内服薬(ミノタブ)、注入治療の治療法それぞれで現れる副作用が異なります。
特に内服薬のミノタブに関しては、国内未承認薬であり皮膚科学会でも薄毛の治療薬として推奨しておらず、外用薬や注入治療と比べても高い服用が起こる可能性や心臓などの循環器系だけでなく腎臓などにも影響があるため、内服するのはリスクが高いといえます。
またミノキシジルが配合された外用薬は市販やネット通販などでも購入できますが、副作用や健康に影響を与える可能性があるということからも、使用に対して心配がある方は医師の診断の下で使用することをおすすめします。
ミノキシジルは発毛効果が高い成分といわれていますが、副作用があるということも理解したうえで使用を検討するとよいでしょう。